労働問題のことなら、労働基準監督署の是正勧告の対応、合同労組・ユニオンの対応などを数多く手掛ける山口県下関市の「赤井労務マネジメント事務所」にお任せを!
(クリニック、診療所)
歯科医院を取り巻く環境は、決して良くはないですが、その中でも業績を向上させている診療所があるのも事実です。
業績向上は、複数の施策が有機的に作用し合っているケースがほとんどです。その中の一つとして、労務管理の改善が挙げられます。労務管理を改善したからといって、直接的に目に見えるような即効性は期待できませんが、中長期的に効果が期待できます。
いわば、漢方薬を服用するイメージでしょうか。
上記は、一般クリニックと同じ傾向と言えるでしょう。歯科衛生士も看護師同様、求人を出しても応募が少ないのが現状です。せっかく採用できたと思ったら、すぐに辞められてしまったり、トラブルメーカーで他の職員とトラブルを起こしたりで、職員の定着化も大きな課題となっています。
労働時間が長ければ、変形労働時間制を活用して労働時間管理を改善すれば、一定程度は効果がありますが、やはり支払うべきものは、支払うといった労務管理が特に重要となってきます。その為には、総額人件費管理をしっかり行う必要があります。
労務管理の基本は、「労働時間と給与」です。この2つは連動していますので、ここをしっかり押さえれば労務問題の半分は解決すると言っても過言では無いかも知れません。歯科クリニックの先生は、歯科治療・予防の専門職であり、労務管理の専門家ではありません。弊所は、そんな歯科医院の先生方をしっかりとサポートしていきたいと考えています。
労務管理の根幹をなすのが、労働時間管理です。ここを押さえることで、労働トラブルの予防にも繋がっていきます。逆に、ルーズな労働時間管理を行っていたことに因るツケは、例えば、「未払い残業代請求」という、思いもよらぬ請求を突然受けるかもしれません。
労働基準監督署の調査指導も、長時間労働の抑制の目的で、医療介護業界を重点的に行っているようです。
項目 | 内容 |
---|---|
(1)労働時間管理 | 労働時間を把握していない |
(2)36条協定未届 | 時間外労働、休日労働があるのにも関わらず届け出ていない |
(3)36条協定違反 | 36協定内容を超えて時間外・休日労働をさせている |
(4)時間外手当 | 時間外に応じた適正な残業代を支払っていない |
(5)時間外手当 | 時間外手当を算出するのに、算入していな手当がある |
(6)管理監督者 | 主任、師長等の管理監督者の範囲に問題 |
歯科医療機関では、職員数が10人未満であれば、1週間の法定労働時間44時間の特例を適用することができます。この特例を適用することができる事業所のことを「特例措置対象事業場」といいます。
この特例措置を実際に運用している医療機関は少ないのが現状です。労働基準法の例外的措置なので週44時間労働でも労基法違反になることはありません。ただし、1日の労働時間は原則どおりの8時間となります。まとめますと、以下の通りとなります。
新規開業の歯科診療所のケースでは、特例措置を適用して週44時間の労働時間管理を運用しても全く問題ないのですが、既存の歯科クリニックが現行週40時間を週44時間へ変更する場合は、留意する必要があります。
1週間、1ヶ月のトータル労働時間が増加しますので、給与給与の水準が現行のままであれば、「労働条件の不利益変更」に該当する恐れがあります。既存の制度変更については、変更時のプロセスが重要になってきます。
歯科クリニックにおける、最適な労働時間管理は1ヶ月単位の変形労働時間制度になります。
採用・導入のプロセスは特段難しいことでは無いのですが、しっかり運用出来ている歯科医院は少ないのが現状です。とういより、この制度を採用している歯科クリニック自体少ないと思います。
1ヶ月の変形時間を平均して、1週間の労働時間が週40時間以下になっていれば、繁忙期の所定労働時間が1日8時間、週40時間を超えていても、残業代の支払いをしなくても済むという制度です。
※(常時10人未満の従業員を使用する歯科医院は週44時間以下「特例措置対象事業場」)
各日、各週の労働時間を特定する必要があります。従って、予定のつかない勤務、行き当たりばったりの勤務形態では採用することができません。毎月の勤務シフトを法定労働時間内で組むことが求められます。
労働時間の総枠(週40時間) | 労働時間の総枠(44時間) | |
---|---|---|
1ヶ月(31日の月) | 177時間 | 194時間 |
1ヶ月(30日の月) | 171時間 | 188時間 |
1ヶ月(28日の月) | 160時間 | 176時間 |
月末・月初や特定の週、特定の曜日について、事前に忙しくなることがわかっている場合は、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用すれば、時間外労働の支払いの削減が可能となります。
ある月(31日の月)をみてみましょう。前提条件として・・・
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1週 | 4h | 9h | 4h | 17h | ||||
2週 | 休日 | 9h | 9h | 9h | 4h | 9h | 4h | 44h |
3週 | 休日 | 9h | 9h | 9h | 4h | 9h | 4h | 44h |
4週 | 休日 | 9h | 9h | 9h | 4h | 9h | 4h | 44h |
5週 | 休日 | 9h | 9h | 9h | 4h | 9h | 4h | 44h |
この月の、所定労働時間の合計時間は以下の通りとなります。
(17h+44h+44h+44h+44h)=193時間<194時間
1週当たりの平均労働時間は、193h×(7÷31)=43.58h<44h
法定労働時間をクリアしています。
この事例の時間外手当の削減効果として、17時間分の時間外労働手当が削減されます。
9時間労働の日が17日分組まれていますが、1ヶ月単位の変形労働時間制度のもとでは、予め8時間を超える勤務時間を組んでいれば、その時間を超えない限り時間外労働の取り扱いとはなりません。
この事例のケースでは、(9-8)×17日分で合計17時間の残業代が削減できています。
法定労働時間を超えて勤務してもらうときや、法定休日に勤務してもらうときは、一定の事項について労使協定書を締結して、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
36協定を締結して、労働基準監督署に届出をすれば、スタッフは時間外労働あるいは休日労働を行う義務はあるのでしょうか??
・・・36協定の締結・届出だけでは、民事上の時間外労働あるいは休日労働の義務は従業員には発生しません。就業規則には勿論ですが、採用時に雇用契約書において、時間外労働の有・無、休日労働の有・無を明示することが、トラブルを予防する労務管理になります。
一定期間 | 限度時間 |
---|---|
1週間 | 15時間 |
2週間 | 27時間 |
4週間 | 43時間 |
1ヶ月 | 45時間 |
2ヶ月 | 81時間 |
3ヶ月 | 120時間 |
1年間 | 360時間 |
第●●条(採用の申し入れ)
就業を希望する者は、次の書類を提出しなければならない。
(1)履歴書
(2)職務経歴書
(3)歯科衛生士免許証・医療事務資格証の原本
(省略)
2.前項の提出書類は、・・・(省略)・・・
歯科衛生士免許証や医療事務資格証は、採用の申し入れ時に持参してもらうことで、資格詐称を防止することができます。ポイントは、原本を持参して貰うことです。
第●●条(採用決定後の提出書類)
職員に採用された者は、採用日までに次の書類を提出しなければならない。
(1)身元保証書
(2)誓約書
(省略)
(6)住民票記載事項証明書
2.第1項の提出書類は、都合で採用日までに提出できない場合は、その旨を申し出てなければならない。
3.所定の書類を期日迄に提出しない場合は、採用を辞退したものとみなすことがある。
提出期限は曖昧なものではなく、採用日までに提出させることが原則です。なお、指定日までに提出できない場合には、クリニック申し出ること、さらに正当な理由がなく指定日までに提出がない場合は、採用辞退の見なし規定を入れることでトラブルを未然に防止することができます。
第●●条(試用期間)
新たに採用した者については採用の日から●ヵ月間の試用期間を設ける。ただし、特別の技能または経験を有する者には試用期間を設けないことがある。
2.医院が必要であると認めた場合は、更に●ヵ月を限度(最大●ヵ月間)に試用期間を延長することがある。
(省略)
4.試用期間は勤続年数に通算する。
試用期間は採用後、正職員として本採用するまでに、職業能力や適応性を見るために設けられた制度です。
なお、試用期間の法的性格については、使用者の解約権が留保された労働契約と解されています。試用期間中の解雇や本採用の拒否は、この解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されることになります。
なお、試用期間の途中で解雇する場合、採用日から14日以内であれば解雇予告や解雇予告手当の支払いの必要がありませんが、14日を超える場合は30日前に予告するか、30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。
第●条(労働条件の明示)
医院は、職員の採用に際し、労働契約の期間に関する事項、就業の場所、従事すべき業務、労働時間に関する事項、給与に関する事項、退職に関する事項、その他の労働条件が明らかとなる事項を記した書面を本人に交付して、その労働条件を明示するものとする。
(省略)
労働基準法では、労働契約締結時に、使用者が労働者に対し、一定の労働条件を明示しなければならないことを定めています。さらに、そのうち主要な労働条件については、書面を交付して明示しなければならないことを定めています。
なお、書面を交付して明示しなければならない事項(労働契約の期間、就業の場所・従事すべき業務、所定労働時間を超える労働の有無を除く)については、就業規則の絶対的必要記載事項でもあるので、その条項を示した上で、就業規則を交付しても、書面による明示義務は果たしたこととされます。
第●条(出退勤)
職員は出勤・退勤に際し、以下の規定こと遵守しなければならない。
(1)始業時刻前に出勤し、就業に適する服装を整え清潔を保持し、始業時刻より業務を開始できるようにすること
(省略)
(4)帰宅の準備は終業時刻後に行うこと
(5)出勤・退勤の際は、本人自らがタイムカードに打刻すること
(省略)
2.タイムカードに打刻された時刻は、出勤・退勤時刻を意味し、実際の就業開始時刻・就業終了時刻とは異なる。
出勤におけるポイントは、始業時刻から業務を開始できる状態にあることが求められます。事前にユニフォームの着替えや準備を済ませ、始業開始時刻までには各自の持ち場に着くことを職員に理解してもらう必要があります。また出勤・退勤時刻と始業・終業時刻の違いも併せて理解してもらいましょう。
第●条(遅刻・欠勤等の届出)
職員が遅刻、早退、欠勤しようとするときは、事前に所定の手続きにより院長まで届け出て、許可をうけなければならない。ただし、遅刻、欠勤についてやむを得ない理由で事前に許可を得ることができなかった場合には、始業時刻前に電話により直接院長に連絡し、事後速やかに所定の手続により届け出るものとする。
(省略)
3.遅刻、早退、私用外出は当該時間分の給与を支給せず、欠勤は1日分の給与を支給しない。
遅刻・欠勤をする際、事前に届出ができない場合は、いつまでに、どういう手段で医院に連絡をするか明確にすべきです。この場合、以下のようなことは認めないようにします。
また、遅刻・早退・欠勤等の賃金控除のルールは給与規程にも明記しておくことが重要となります。
第●条(懲戒の種類、程度)
職員が本規則に定める懲戒事由のいずれかに該当した場合には、その事由および情状に応じ、次の区分により懲戒処分を行う。
(1)訓戒:始末書を提出させ、将来を戒める。
(2)減給:始末書を提出させ、減給する。ただし、減給は、1回の事案に対する額が平均賃金の1日分の半額、総額が一給与支払期における給与総額の10分の1の範囲で行うものとする。
(省略)
(6)懲戒解雇:予告期間を設けることなく即時解雇する。この場合において、所轄労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告手当を支給しない。なお、懲戒解雇に処する者に対しては、退職金の全部または一部を支給しない。
懲戒解雇する場合においても、労働基準法に規定する30日前の予告または30日分の解雇予告手当の支払いが必要になります。
ただし、労働基準監督署長から「解雇予告除外認定」を受けた場合には、解雇予告および解雇予告手当の支払いが免除されます。さらには、懲戒解雇時には退職金を支払わないように明記しておくことも重要です。
第●条(戒告・譴責・減給・・・・)
職員が次の各号のいずれかに該当する場合には、情状により戒告、譴責、減給、出勤停止または降格とする。
(1)本規則の服務心得の規定に違反し、その程度が重くないとき
(2)正当な理由がなく、無断遅刻、無断早退、無断私用外出又は無断欠勤をしたとき
(3)正当な理由がなく、しばしば遅刻、早退し、またはみだりに任務を離れる等誠実に勤務しないとき
(省略)
懲戒の事由は出来るだけ詳細に明記しておく必要があります(罪刑法定主義)。懲戒処分した際のトラブルの原因となります。また、懲戒処分を行った場合は、その都度、始末書の提出を求めることも重要です。
第●条(損害賠償)
職員の重過失(故意を含む)または反則行為等によりクリニックに対して損害を与えたときは、前条に定める懲戒のほか、本人あるいは身元保証人に対し、損害賠償の請求をすることがある。なお、その賠償責任は退職後も免れない。
(省略)
損害賠償の額を事前に予定することは法律で禁じられています。しかし、現実に発生した損害額の実費をに請求することは問題ありません。ポイントは、懲戒処分を受けても、損害賠償の責任を免れないことを明確にしておくことです。
第●条(退職)
職員が次のいずれかに該当するときは退職とする。
(1)退職を願い出て、医院が承認したとき
(2)死亡したとき
(3)定年に達したとき
(省略)
退職時は、トラブルが多く発生するステージでもあります。どういう基準を満たしたときに、退職扱いとなるかを明確にしておくことが重要です。
最近多く見受けられる、連絡が取れなくなった職員の処遇も民事的に無効にならない程度に条文化することも、リスクマネジメントとして重要になってきます。
第●条(自己都合退職)
職員が自己の都合により退職しようとするときは、少なくとも退職の日の●●日前までに希望する退職の日ならびにその事由を記載した退職願を医院に提出しなければならない。
(省略)
5.前2項の場合において、職員は退職の日までの間に従前の職務について後任者への引継ぎを完了し、業務に支障をきたさぬよう、専念しなければならない。
何日前までに退職願を提出すべきかを明確にしておくことが重要となります。この期間が、あまりにも長いと無効になることもあります。
また、退職の承認があるまでは退職できない旨を明記するケースもありますが、これに関しても、長期の拘束はトラブルになることもあるので現実的な規定にすることがポイントとなります。
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