労働問題のことなら、労働基準監督署の是正勧告の対応、合同労組・ユニオンの対応などを数多く手掛ける山口県下関市の「赤井労務マネジメント事務所」にお任せを!
(申請、手続、届出、代行)
労災事故が発生すると、会社としては、通常業務にはないイレギュラーな対応に迫られます。多くの会社では、労災事故は滅多に起きないでしょうから、なおさら対応には苦慮するところです。
「何から手を付けたら良いのか分からないのが現実」だと思います。
それが、重大災害(死亡事故、重度障害)となると、対応すべき事項が多岐に渡ってきます。優先順位を間違えてしまうと、被災者・遺族との関係、行政機関(労働基準監督、警察署)の対応に大きな支障が出てきます。
また、業務災害・通勤災害が、交通事故のケースでは、第三者行為災害に該当し、自賠責保険、自動車保険との調整、更には政府労災との求償、控除の問題も出てきて、より複雑さが増してきます。後々の補償額にも影響することも決して珍しいことではありません
労災事故対応のポイントは、然るべき時期に、然るべきアクション(手続、確認)をとることです。この対応を間違えると、被災者・遺族との今後の交渉に支障が出てくること、労働基準監督の行政処分・検察庁送致にも影響が出てくる可能性があります。
重大災害であれば、企業の安全配慮義務が問われ、被災者・遺族からの民事損害賠償請求が通常は行われます。また、労働安全衛生法違反を指摘されると、違反の程度によっては、労働基準監督が書類送検し、刑罰が決定します。
労災災害が発生した場合は、対行政機関(労働基準監督、警察署)と、対被災従業員の2つに分けて対応する必要があります。
それでは、以下順を追って説明していきます。
事故発生直後の初期対応に、万全を期すことが、被害の拡大を防ぐことにもつながってきます。救急、監督署の連絡も並行して行うことが重要となる。事故の目撃者の確認、事故現場の保存・写真撮影も行うことで、事故報告の際の資料となる。
事故現場では、被災従業員の負傷状況の確認をすることが求められる。場合によっては、その場で救急措置を施すことも必要である。被災程度に応じて、病院への搬送方法をどすうるかを早急に決める必要がある。
受入病院への手配も必要になることから、一般的には救急車を呼ぶことになる。事故情報については、会社のトップに速やかに伝えることも、現場責任者の仕事になる。
一般的には、入院が必要な場合は、被災者家族連絡することになる。到着後、事故の発生状況を説明する。なお、被災労働者が死亡した場合は、十分配慮した対応が求められる。
災害が死亡災害、重大災害等一定以上の場合、所轄労働基準監督への緊急報告が必要となる。通常は、電話連絡となる。
現地調査が実施されるのであれば、現場を保存し調査立ち会いへ向けて準備する。この緊急報告とは別に、労働者死傷病報告の準備も併せて行うとスムーズな対応がとれる。
現場調査は、災害発生の事故発生時の作業状況を特定することが目的となるので、事故当日の作業状況が説明できるよう準備を行う必要がある。
労働者死傷病報告は、休業日数が4日以上(様式23号)か4日未満(様式24号)かで提出様式が違ってきます。
事故報告は、安衛則96条に列挙された事故が発生した場合に提出する必要がある。(様式23号)
労働基準監督の実況見分とは別に、社内において独自に事故調査を実施し、再発防止策を取りまとめることが重要である。その際、確定された再発防止策は、社内に周知徹底する必要がある。
まずは、療養補償給付、さらに休業が伴う場合は、休業4日目以降について休業補償給付が支給される。被災状況により、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、介護保障給付等の保険給付も請求することになる。
被災者・遺族は、加害者に対し、損害賠償請求を免除することが出来るが、この場合、労災保険給付を受ける権利を失う可能性があるので、十分留意する。
(昭38.6.4最高裁三小判決)
労働安全衛生法が定める所要の措置を講じていない状況で発生した事故の場合、労働安全衛生法違反疑義事件として立件される。地方検察庁に送検され、処分を待つことになる。初犯であれば、公判請求することは希で、略式起訴となることがほとんどである。
一般的には・・・
とされています。
労災かくしを行う動機は、建設土木業界においては、事故発覚による元請け事業者からの切り捨てを恐れて、公共工事であればペナルティを受けるのを恐れて等、事情は様々です。ついつい、軽い気持ちで行うのですが、れっきとした犯罪行為に当たります。労災認定を受ければ、受給できたであろう、治療費、休業手当等、被災労働者の受ける不利益も少なくありません。
労災かくしの発覚は、被災労働者の家族からの通報、同僚労働者からの通報等、身近な者からの通報がほとんどです。労災かくしが、労働基準監督に発覚した場合は、極めて重い処分(司法処分)を覚悟する必要がある。一定期間経過したあとで、発覚することも、この労災かくしの特徴といえる。
健全な事業の存続のことを考えたら、この労災かくしは、全く割に合わない愚かな行為であると考えます。
労災事故が発生した場合、使用者は、その過失の有無に関わらず、被災労働者に対して、一定の補償を行う必要があります。
民事上の損害賠償請求においては、過失の存在が認められるのに対して、労災保険の補償制度に関しては、過失の存在は問われないのが特徴です(使用者の無過失責任)。
どんな場合に | 給付の種類 | 給付の内容 |
---|---|---|
療養のため休業する場合 | 療養補償給付 | 療養費の全額 |
休業補償給付 | 休業4日目から、1日当たり給付基礎日額の6割相当額 | |
傷病補償年金 | 療養開始後1年6ヶ月を経過しても治らず、障害の程度が傷病等級に該当する場合、給付基礎日額の245日~313日分の年金 | |
傷病が治癒後、 障害等級に該当した場合 | 障害補償年金 | 障害の程度に応じて、給付基礎日額の131日分(7級)~313日分(1級)の年金 |
障害補償一時金 | 障害の程度に応じて、給付基礎日額の56日分(14級)~503日分(8級)の年金 | |
労働者が死亡した場合 | 遺族補償年金 | 遺族数に応じて、給付基礎日額の153日分(1人)~245日分(4人)の年金 |
遺族補償一時金 | 遺族補償年金の受給できる者がいない場合、その他一定の遺族に対して、給付基礎日額の1,000日分の一時金 | |
埋葬料 | 315,000円に給付基礎日額の30日分を加算した額(最低補償額として、給付基礎日額の60日分) | |
介護を要する場合 | 介護保障給付 | 1ヶ月当たり、常時介護の場合は、56,720円~104,530円、※随時介護 |
不幸にも労災事故が起こってしまった場合、会社はどんな責任を負うのでしょうか。被災従業員の状況にもよりますが、事態が重ければ多いほど、原則として、より重い責任が課されます。なぜ原則なのかと言えば、会社の労働災害防止について安全防止対策、安全配慮義務が履行されたかによって、責任の度合いが変わってくるからです。
この法律は、会社に対して、直接、安全上の措置義務を課し、処罰に関しては、両罰規定を備え、行為者と併せて、法人責任を追及する仕組みになっています。捜査は、労働基準監督官が実施する。
刑法211条1項に規定する犯罪である。業務上必要な注意を怠り、これにより他人を死傷させる場合が、これにあたる。業務上過失と、相当因果関係の2つがポイントとなる。捜査は、警察署が実施する。
裁判では、使用者の安全配慮義務の履行状況が厳格に問われることになる。労働災害の発生が
が争点となる。
損害賠償額は、高額化している。死亡事故であれば、最低でも数千万円の補償は必要と思われる。労災上乗せ保険で、カバーすることもリスクヘッジとして重要である。被災労働者に過失が認められれば、損害賠償額の減額は一定程度において可能である。裁判実務上、この過失相殺の判断は、裁判官の自由な心証形成に委ねられている。
上記の刑事責任と民事責任は、従来から会社が追及される責任として存在していましたが、この社会的責任という概念は、そんなに古いものではありません。
ステークホルダー(利害関係者)は、単に事業に直接関わる者でだけでなく、広く地域社会ひいては社会全体に及ぶものです。
また企業の責任が、金銭的補償あるいは、刑事処分だけで果たされるものでもなく、この社会的責任に対して、企業がどう対応するかが、今後ますます重要になっています。
安全配慮義務は、労働契約上の付随義務として、使用者に課せられた義務を言いますが、これは過去に出された判例(自衛隊整備工場事件:昭50.2.25最高裁三小)を拠り所にしています。
その後、労働契約法が成立し明文化されました。この労働契約法は、民法の特別法としての位置づけですが、罰則等は規定されていません。しかし、裁判上、安全配慮義務は非常に重要な判断材料になります。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
この2点について、使用者の安全配慮義務の履行が尽くされたか否かを判断することになる。労働災害の発生について、予見可能性がなく(全くの想定外であった)、結果を回避する手段もなかったというケースでは、使用者の責任と問われない。(実務上あまり無いと思われるが・・・)
安全配慮義務違反に該当するか否かは、個々のケースで判断することになる。安全衛生法令の遵守だけでは、安全配慮義務を尽くしたことにはならない。しかし、安全衛生法令の違反は、義務違反を構成することになる。
その他、行政通達、指針、努力義務規定なども、十分留意する必要があるのは言うまでもない。
労災事故が発生した場合、使用者の安全配慮義務違反が確認されれば、被災労働者・遺族は、労災保険給付請求権と事業主に対する損害賠償請求権の双方を有することになる。
この場合、この2つの請求権が調整されることなく履行されると、損害の二重填補(実際の損害額より多くの支払い)という不合理が生じることになる。この場合、以下のような支給調整が行われる。
原則として、労災給付から、民事損害賠償項目の逸失利益、療養費、葬祭費用について、支給調整される。
損害賠償先行 | 同一の事由で、第三者の損害賠償が先行した場合は、その価額の限度で労災事故発生後3年間に支給事由が生じたものについて、労災給付は行わない |
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労災給付先行 | 同一の事由で、労災給付が先行した場合は、その価額の限度で労災事故発生後3年間に支給事由が生じたものについて、被災労働者の第三者に対する損害賠償請求権を代位取得する |
【中国地方】-山口県、広島県、岡山県、島根県、鳥取県
【九州地方】-福岡県、大分県、熊本県、長崎県、佐賀県、鹿児島県、宮崎県、沖縄県
【四国地方】-愛媛県、香川県、高知県、徳島県
※ただし、下記の業務は全国対応が可能です。
【労働トラブル対応・解決業務】
【トラック運送業の賃金制度】
【就業規則の作成・変更・見直し】
【労務監査(M&A合併を含む)】