労働問題のことなら、労働基準監督署の是正勧告の対応、合同労組・ユニオンの対応などを数多く手掛ける山口県下関市の「赤井労務マネジメント事務所」にお任せを!
パワハラは加害者の責任であるとか、社員同士の問題なんだから、会社は関与することなく放置しているケースも、ままあります。このような対応は、最悪のパターンで深刻度が大きくなり、それに比例して会社の法的責任も重くなるのが一般的です。
企業経営上、パワハラを根絶することは難しいので、パワハラの芽を早期に察知し、それに素早く対応することです。いわゆる、初動対応です。これは何もパワハラに限らず、労働問題全般に言えることですよね。
初期段階で適切な対応をすれば、会社の法的責任も免れるか、あったとしても比較的軽い責任で済むでしょう。これも世の中全般に言えることですね。
さて職場でパワハラが発生した場合、加害者が責任を負うのは言うまでもありませんが、企業はどういう責任を負うのでしょうか。加害行為の実行者でない会社も民事上の責任が生じることになります。
主なものとして、加害者の雇い主としての責任である「使用者責任」と法律上の義務違反に基づく「債務不履行責任」です。以下、まとめてみました。
社員が事業の執行に際し、不法行為等で与えた損害を賠償する責任がある。
いわゆる、「使用者責任」です。
(民法715条)
使用者には、労働者の安全や職場環境に配慮する義務がある。
いわゆる、「債務不履行責任」です。
(民法415条)
⺠法715条1項(使用者責任)
ある事業のために他⼈を使⽤する者は、被⽤者がその事業の執⾏について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
高卒新人が⼊社して約半年後に⾃殺したのは上司のパワハラが原因として、遺族が損害賠償を求めた。福井地裁は、⼿帳の「死んでしまえばいい」などの⾔動は、叱責を超えて⼈格を否定し、威迫したと認容。記載は客観的事実とも符合し不法⾏為とした。極めて強度の⼼理的負荷を受け精神障害を発症したとして、⾃殺との相当因果関係を認め、約7,200万円の⽀払いを命じた。(労働新聞社2016.4.4記事より引用)
裁判では、新人社員はパワハラが原因でうつ病を発症し自殺に至ったものであるとして、加害者である上司の不法行為責任(民法709条) 、上司の雇用主としての会社の使用者責任(民法715条)を肯定し、 上司に連帯して約7,200万円を支払うことを命じた。
⺠法415条1項(債務不履行責任による損害賠償)
ある事業のために他⼈を使⽤する者は、被⽤者がその事業の執⾏について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
パワハラを受けて⾃殺したとして、遺族が会社に損害賠償を求めた。徳島地裁は、頻繁なミスに対する叱責で、発⾔内容も指導の範囲内とした⼀⽅、2年間で体重が15キロ減るなど体調不良は明らかで、⼈間関係に起因すると容易に推認できたと判断。本⼈から相談がなくても配慮不要とはいえず、異動など環境の改善を怠り安全配慮義務違反として約6千万円の賠償を命じた。(労働新聞社2019.5.9記事より引用)
裁判では、加害者である上司の叱責は⼈格否定とまではいえず、不法⾏為に当たらないため、会社の使⽤者責任は否定されたが、加害上司と部下(被害者)の⼈間関係上の労務トラブルに対応してこなかったことが、会社の安全配慮義務違反に当たるとして、被害者が⾃殺したことについて使⽤者の賠償責任が肯定された。
●以下、パワーハラスメントに適用される代表的な法律をまとめてみました。
加害者に適用される民 法 | 加害者に適用される刑 法 | 会社に適用される民 法 |
*民法709条 | *刑法204条「傷害罪」 | *民法715条 |
業務上の指導なのか、パワハラなのか、悩ましい問題ですね。同じように、「同一労働同一賃金」の問題でも、不合理な格差があるのか否か、判断が難しいです。
これって、実は共通点があるんです。両方とも、絶対的な数値指標がないので分かり難さを助長していると思っています。(対象が定性的)
ここまでなら「セーフ」、これ以上なら「アウト」というような絶対的基準がないので対応を間違ってしまい最悪の場合、労使トラブルに発展してしまいます。
一方、残業時間の上限規制は「月45時間以下」、「年360時間以下」、「月100時間未満」といったように絶対的な数値指標があるので分かり易いですよね。有給休暇の取得義務も「最低5日」と規定されているので対策が取りやすいです。(対象が定量的)
労務管理は、その対象が「定性的」なのか「定量的」なのかで対応方法が違ってきます。パワハラについては、「定性的」ですね。「大きな声で注意したからパワハラ?!」
じゃあ、どこからが大きな声なのか、何デシベルまでなら許容範囲なのかは、法律にもガイドライン(指針)にも規定されていません。「厳し過ぎる指導?!」じゃあ、厳しさの判断基準は何なのか?指導を受ける側の主観にも大きく左右されます。
対象が定性的な労働問題の典型的なものとして、「解雇」があげられます。解雇の有効性判断も分かりづらいですね。裁判例、判例は参考にはなりますが、所詮「事例裁判」ですので、参考程度にとどまります。
ここで、「定量的」、「定性的」を敢えて分類してみました。
~定量的~ | ~定性的~ |
時間外労働の総量規制 | パワーハラスメント |
有給休暇の取得義務 | セクシュアルハラスメント |
賃金債権の請求期間 | 同一労働同一賃金 |
最低賃金の引き上げ | 解雇の有効性判断 |
社会保険の加入基準 | 労働条件の不利益変更 |
管理監督者(労働基準法41条2号) |
如何でしょうか。
定性的なものの多くは「民事上の問題」です。また一旦こじれたら、大きな問題に発展するものばかりです。パワハラのケースでは、「パワハラを受けた→メンタル不全→勤怠不良→退職→損害賠償請求(精神的苦痛に対する慰謝料等)+未払い残業代請求」が典型的なパターンです。
職場におけるパワーハラスメントですが、2020年6月に法制化され、中小企業においては2022年4月から適用されました。法制化前も、厚生労働省のワーキンググループで定義化されていましたが、法律はこれをほぼ踏襲した内容となっています。
パワハラを規制する法律は、「労働基準法」ではありません。労働施策総合推進法(略称)という法律において、第9章(第30条の2から30条の8)に規定されています。
あまり聞かれたことはない法律だと思います。
カテゴライズが難しい法律の場合、この労働施策総合推進法に規定される場合が多いようです。従って、パワハラを規定する単独の法律はなく、第9章がパワハラを規制する条文となります。これだけでは理解が深まらないので、指針(ガイドライン)で補完しています。パート・有期雇用労働法、改正育児休業法においても、ガイドラインで補完しているパターンが昨今ではすっかり定着しています。
さて、職場におけるパワハラの定義ですが、以下3つを全て満たすものを指します。
「職場」において行われる | |
① | 優越的な関係を背景とした言動であって、 |
② | 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、 |
③ | 労働者の就業環境が害されるもの |
●「職場」とは
事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、労働者が通常就業している場所以外であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれます 業務を遂行する場所であれば、通常就業している場所以外であっても、 ・出張先 ・業務で使用する車中 ・取引先との打合せ場所 も含まれます。 勤務時間外の「懇親の場」、社員寮、通勤中であっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当します。その判断に当たっては、 ・職務との関連性 ・参加者 ・参加や対応が強制的か任意か 等を考慮して個別に行います。 |
●「労働者」とは
正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正 |
●「優越的な関係を背景とした」言動とは
業務を行うに当たって、当該言動を受ける者が行為者とされる者に対して抵抗や拒絶することができない関係を背景として行われるものを指します。 ・職務上の地位が上位の者による言動 ・同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難 |
●「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは
社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、またはその態様が相当でないものを指します。 ・業務上明らかに必要性のない言動 ・業務の目的を大きく逸脱した言動 ・労働者に問題行動があった場合であっても、人格を否定するような言動など業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動がなされれば、当然パワハラに当たり得る ・加害者の動機・目的、受け手との関係、属性、加害者の数、行為者の継続性・回数 |
●「就業環境が害される」とは
当該言動により、労働者が身体的・精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能⼒の発揮に重大な悪影響が生じる等、労働者が就業する上で看過できない程度の⽀障が生じることを指します。 上記判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるか否かを基準とすることが適当 |
前項において、パワハラの定義を解説しました。
「職場において行われる、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるもの」
この労働者の就業環境が害されるものに、6パターンを類型化しています。
ポイントをまとめてみました。
行動の類型 | 該当すると考えられる例 |
①身体的な攻撃 | ・殴打、足蹴りを行う ・相手に物を投げつける |
②精神的な攻撃 | ・人格を否定するような言動を行う。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む ・業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う ・他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う ・相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信 |
③人間関係から の切り離し | ・自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりする ・一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる |
④過大な要求 | ・長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずる ・新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責する ・労働者に業務とは関係のない私的な雑用処理を強制的に行わせる |
⑤過小な要求 | ・管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる ・気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない |
⑥個の侵害 | ・労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする ・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する |
組織内での職務上の権力を背景として、立場の弱い人に対するパワーハラスメント(パワハラ)が行われます。
集団的いじめ。
部署全体でその人の存在を無視する、不当な言いがかりを付け責任を押しつけると言う種類のパワハラです。
中途採用で入った社員に対し、昔からいた社員が仕事を教えなかったり、異動してきた上司に必要な情報を渡さない。
ITの苦手な者をバカにし、無能呼ばわりする、などもこれに当てはまります。
ある集計(アンケート)で下記のような事例がパワハラに該当するということで多い順でありました。
check □ | 人前で部下を激しく叱責してしまうことが度々ある。 |
---|---|
check □ | 叱るとき、部下の人間性まで批判してしまうことがある。 |
check □ | 相手の存在そのものを否定してしまうような言葉で叱ることがある。 |
check □ | 目障りに感じたり、つい無視してしまう部下がいる。 |
check □ | 目上の自分に意見を言う部下を失礼だと感じることがある。 |
check □ | 部下に対して、腹が立って感情を抑えきれないことがある。 |
check □ | 嫌なことがあると人に当たる傾向がある。 |
check □ | 厳しく鍛えることで人は育つと思う。 |
check □ | 最近部下のなかにボーッとしたり遅刻、欠勤をする部下がいる。 |
check □ | 寝付きが悪く、あるいは明け方目が覚めたりする、疲労感が酷い。 |
【中国地方】-山口県、広島県、岡山県、島根県、鳥取県
【九州地方】-福岡県、大分県、熊本県、長崎県、佐賀県、鹿児島県、宮崎県、沖縄県
【四国地方】-愛媛県、香川県、高知県、徳島県
※ただし、下記の業務は全国対応が可能です。
【労働トラブル対応・解決業務】
【トラック運送業の賃金制度】
【就業規則の作成・変更・見直し】
【労務監査(M&A合併を含む)】