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トラック運送業の賃金制度

労務トラブルと残業代請求から会社を守る!

トラック運送業「賃金制度構築」業務のご案内

トラック運送業の給与制度・労働時間管理は特殊であり、労働基準法においては施行規則・通達までの理解が必要とされます。また、改善基準告示の理解は労働時間管理には必須であり、より複雑化させています。更には、労働裁判で出される直近の判例・裁判例の情報収集も制度設計を行う上で非常に重要になってきます。

 弊所では、トラック運輸業・物流業の給与体系の設計や労務管理体系の構築をご提供いたします。残業代請求のみならず、許認可面でも労働法令遵守が要請されているトラック運送業・物流業のリスク対策に一助になれば幸いです。このコンテンツの出典元として、株式会社ビジネスリンク代表取締役 西川幸孝氏の「賃金制度コンサルティング講座」の資料を一部使用又は加筆修正しております。(文責:赤井孝文)

物流専門誌「ロジビズ:2022.8号」に執筆、寄稿しました

【目次】下記クリックすればジャンプします

トラック運送業の賃金制度

●給与制度構築で重要なこと
  • ・・・労働基準法の理解(特に労働時間、休日)
  • ・・・労働基準法施行規則の理解(特に歩合給実務)
  • ・・・労働基準法関連の通達の理解
  • ・・・改善基準告示の理解
  • ・・・労働裁判における判例、裁判例の動向

弊所では、上記の理由によりシンプルなコンプライアンス(法令順守)対応型の給与制度設計に軸足を置いています。資格等級を用いた評価型賃金制度などは取り扱っていません。何故なら、運用できていない会社を数多く見てきたからです。「百害あって一利なし」まで言うつもりはありませんが、余計な業務が増えて成果が出ていないところが多いのが現実です。(勿論、中には成果を出しているところも少なからずあるようです

 コンプライアンス対応型の賃金制度の最大の目的は、「未払い残業代の防止」です。言い換えれば、適切な労働時間管理を行い、結果然るべき残業代(時間外労働手当、休日労働手当、深夜労働手当)を支払うという、至極当たり前のことを目指しています。

 弊所では、経営者の方に基本的理解の支援またその確認をしながら制度導入を進めていきますので、「労働基準法なんて見たこともない」と言う社長さんも安心して取り組むことが出来ます。多くのケースでは、社長さんと共に実務担当者(配車係、運行管理者)も同席で進めて行きますので、会社としての理解度がグッと深まります。

●コンプライアンス対応型の賃金制度の特徴
  • ・・・未払い残業代の防止
  • ・・・適切な労働時間管理の構築
  • ・・・改善基準告示に対応
  • ・・・然るべき残業代の支払い(時間外、休日労働手当、深夜労働手当)
  • ・・・運用がシンプルである
●トラック運送業の給与形態

トラック運輸業においては、長時間労働を前提とした賃金体系が多いのが特徴です。こここでは、代表的なモデルとして3つの給与形態を解説します。

(1)基本給 + 手当 + 固定残業

トラック運送業では、オーソドックスな給与体系です。地場輸送の短距離から中距離のドライバー向けに多く見受けられます。固定的な賃金で一定の給与額を確保して、インセンティブ的要素な給与として歩合給を支給しています。

(2)基本給 + 手当 + 歩合給 + 残業手当

この賃金形態も、トラック運転手でみられる典型的なパターンです。短距離から中距離のドライバー向けで、定期配送などの便を多く持つトラック運送業でも利用度が高いのが特徴です。

(3)完全歩合給(オール歩合給)+ 残業手当

フルコミッションの出来高払い型の賃金形態です。請負契約に近いイメージがありますが、労働契約においても一定の要件を満たせば認められます。

給与制度の比較・特徴(トラック運送業)

トラック運送業の賃金制度は、運行形態、運行距離、運行時間などによって「適切」とされる制度が違ってきます。地場輸送、定期便、長距離便の自動車運転手が同じ給与制度では、運転手のモチベーション、法令遵守の観点からも問題があるでしょう。下表において、「固定給制度」、「固定給+歩合給」、「完全歩合給(オール歩合給)」の3つの給与形態の特徴(メリット、デメリット)をご紹介します。

 弊所の肌感覚で言えば、「固定給制」を採用している運送会社さんは少数派です。定期便で採用しているのを数社見たことがあるくらいです。つぎに「固定給+歩合給」を採用しているトラック運送業は比較的多く、運輸業の賃金のスタンダードとも言えるでしょう。最後の「完全歩合給」ですが、長距離便に多く見られる傾向があります。

 多くの給与制度を見てきましたが、上記の3つのいずれにおいても、「適正な残業代計算」を行っていない運送会社さんが散見されました。「固定給」と「歩合給」の残業代計算の相違を理解していないためです。以下、3つの賃金制度における「残業代の相違」をご紹介します。下記の事例は、比較のための事例であり、単純化しております。

前提条件として
*月平均170時間の所定労働時間
*時間外労働:80時間

 のケースにおいて

固定給のみ」、「固定給+歩合給」、「オール歩合給」の3つの給与制度を採用した場合の残業代を比較しています。

「固定給のみ」  →176,471円(残業代)
「固定給+歩合給」→100,236円(残業代)
「完全歩合給」  →  24,000円(残業代)

「固定給のみ」の176,471円「完全歩合給」の24,000円とでは、

約150,000円の残業代の差額が生じています。

なぜ、残業時間が同じなのに、賃金制度の違いでこれだけの差額が出るのでしょうか?
これは、固定給と歩合給の残業代の計算プロセスが違っているからです。

残業代計算プロセスの違い(固定給と歩合給における)

固定給と歩合給においては、残業代計算のルールが違ってきます。まずは、その根拠となる法律を理解する必要があります。労働基準法37条において、割増賃金の割増率が規定されています。そして、労働基準法施行規則第19条において、時間単価の計算方法が規定されています。歩合給を採用しているトラック運送業さんは、この2つの条文の理解は必須です

●労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金

使用者が、第33条又は36条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

② ~省略~
③ ~省略~

④ 使用者が、午後10時から午前5時まで(省略)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
⑤ ~省略~

解説

 この条文では、残業したら25%割増、休日出勤したら法定休日:35%割増、所定休日:25%割増を支払わなければならないと規定しています。シチュエーションごとに適正な割増賃金を支払ってくださいね、と言ってる訳です。

●労働基準法施行規則第19条(時間単価の計算方法)

法第37条第1項の規定による通常の労働時間又は通常の労働日の賃金の計算額は、次の各号の金額に法第33条若しくは法第36条第1項の規定によつて延長した労働時間数若しくは休日の労働時間数又は午後10時から午前5時(~省略~)までの労働時間数を乗じた金額とする。

① 時間によつて定められた賃金については、その金額

② によつて定められた賃金については、その金額を1日の所定労働時間数(~省略~)で除した金額

③ ~省略~

④ によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(~省略~)で除した金額

⑤ ~省略~

⑥ 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(~省略~)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額

⑦ 労働者の受ける賃金が前各号の2以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額

解説

 この条文では、給与形態の違いによる「時間単価」の計算方法を規定しています。歩合給を採用しているのであれば、6項の規定により時間単価を計算します。

では、「月額固定給+歩合給」を採用している場合は、どうなるのでしょうか?

 この場合は、7項の規定により、4項と6項に規定されたそれぞれの方法により算出して得た金額の合計額となります。

 「歩合給には、残業代は必要ない、それが歩合給なんだから!」と、まだこの都市伝説を一部経営者は信じているようですが、残念ながら多くのトラック乗務員は既に気づき始めています。

 上記労働基準法施行規則第19条をまとめると下記表になります。

1号

時間によって定められた賃金については、その金額

4号

によって定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数で除した金額

6号

出来高払制その他の請負制によって定められた賃金については、その賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額

7号

労働者の受ける賃金が前各号の2以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によってそれぞれ算定した金額の合計額

残業代組み込み型の賃金制度(定額残業、固定残業)

 残業代組み込型の給与制度とは、「一定の残業時間に見合う残業代を毎月、固定的に支払う制度」です。例えば、月45時間分の残業代●●円を毎月固定手当として支払う場合が該当します。

 一般的には「定額残業制度」または「固定残業制度」と呼ばれています。労働基準法、その他法令に規定されたものではなく、判例・裁判例から導かれて確立された制度とも言えるでしょう。

 定額残業制度は下記のようなイメージになります。(金額については、法的根拠必要)

 もう少し、具体的に説明しましょう。
下記に、Aさん、Bさん、Cさんの例で解説します。

・Aさんの残業単価@1,250円→ 固定残業手当 = 37,500円

・Bさんの残業単価@1,350円→ 固定残業手当 = 54,000円

・Cさんの残業単価@1,400円→ 固定残業手当 = 63,000円

 ただし、固定残業手当は支給しっぱなしではダメで、メンテナンスつまり運用を適正に行うことが必要です。よく誤解されるのですが、「定額残業制度を採用すれば、労働時間管理を行わなくてもいい」なんて仰る経営者がおられますが、これも都市伝説の一つです。固定残業制度を否定される最大の要因になります。固定残業代に組み込まれた労働時間数を超える時間外労働を行った場合は、その差額を追加精算する必要があります。これを「過不足精算」といいます。判例から導かれた判例法理の一つです。

下の図で、事例をみてみましょう。

 上記Aさん(運行管理者)の例で説明しましょう。

 Aさんの固定残業手当に対する残業時間は30時間で設定されています。その月は、たまたま事故が数件発生し、関係先との対応で忙しくなってしまい、残業時間を集計すると45時間でした。30時間の設定を15時間オーバーしているので、その月は15時間の残業代を別途支払う必要があります。これを「過不足精算」といいます。

トラック運送業に限らず、多くの会社がこれを怠っているのが現状です!

合同労組(ユニオン)との団体交渉においては、固定残業制度が否定されて、最悪消滅時効3年分の差額残業代が請求されます。さらには、固定残業手当自体が、基準内給与であるとの主張をされれば被害額は増額します。

 いっぽう、労基署の調査(臨検)においては、定額残業制度が否定された場合、遡及支払いは3ヶ月から6ヶ月分が相場だと言われています。いわゆる「是正勧告」ですね。是正勧告自体は、「行政指導」ですから、従う必要はありません。ただ、明確な労働基準法違反があれば、その後に控えている伝家の宝刀である「書類送検」が控えていますので、ここは速やかに対処された方が無難でしょう。

固定残業制度の留意点(定額残業)

そもそも、残業代に関するルールは労働基準法37条及び労働基準法施行規則19条等に定められているだけで、支払い方法の具体的詳細については特に規定されていません
割増賃金の支払方法については、以下の2通りになるでしょう。

そのうち、残業代組込み型賃金制度は、「②固定払い方式」に該当します。

①別立て支払い方式

所定の給与とは別立てに、割増賃金を支払う方式

固定払い方式

「基本給組み込み」又は「手当」として定額を支払う方式

固定残業制度を規定した法令はないのですが、労働裁判において、その有効性を巡り行われた裁判例を以下紹介しましょう。3つめは、行政通達においても言及されています。

関西ソニー販売事件 (大阪地裁昭63.10.26)

「時間外労働手当を固定額(定額)で支払うことは、実際の時間外労働等によって算出した割増賃金に相当する金額が支払われている限り、必ずしも違法ではない

国際情報産業事件 (東京地裁平3..27)

「基本給に割増賃金が含まれているというためには、
.割増賃金にあたる部分が明確に区分されていること
.法所定の割増賃金との差額を支払う旨が合意されていること、が必要である」

厚労省通達 (昭和24128日 基収3947号)

労働者に対して実際に支払われた割増賃金が法所定の計算による割増賃金を下回らない場合には、労働基準法37条違反とならない

 如何でしょうか?

 定額残業制度については、戦後間もない昭和24年に厚労省(旧労働省)が、要件さえ満たせば、労働基準法違反にはならない旨の行政通達が出されています。その後、昭和、平成時代における労働裁判を経て有効性要件が確立されました。

 さて、トラック運送業が固定残業制度を採用する意義は何でしょうか?

 そもそも論です。下記に簡単にまとめてみました。

定額残業制度の意義

  1. 人件費の予算化
     基本給・手当の支給額に関しては、人数管理さえ正確であれば、ある程度予想は可能です。しかし、残業代は不測の事態の対応、業務の繁閑等で正確な把握が困難である場合が多く、蓋を開けてみたら今年はこれだけの残業代が計上されていたということも・・・。そこで固定残業制度を採用し残業代を予算化して現実的な人件費管理を行う。
  2. 最低保障
     季節性による繁閑、受注量の変動等の要因により、残業代の支給額もそれに連動して大きく変動することになります。これにより、給料の支給額も変動し不安定になりがちになります。固定残業制度を採用し、支給額の平準化を図ります。
  3. 管理監督者性が否定された場合への対応
     管理監督者については、労働基準法41条2号において、ざっくりと言えば「残業代は支払わなくてもよい」と規定されています。残念ながら、地方都市における地場の中小企業の多くの管理監督者は、通達・裁判例が求める要件を満たしていないのが現実です。
     「部長」、「課長」と人事上のポストを付けるのは役割上必要ですが、それと「残業代を支払わない」のは別の話になります。労基署の調査、合同労組(ユニオン)からの団体交渉、訴訟レベルになると、会社は非常に不利な立場に追い込まれます。「名ばかり管理職」対策としてのリスクヘッジを図ります。
  4. 未払い残業代請求対策
    トラック運転手には、改善基準告示において「拘束時間」の管理が求められています。始業時刻から終業時刻までを把握する必要があります。労働時間管理がルーズであれば、拘束時間のすべてを労働時間と捉えられる可能性もあります。それは、ダイレクトに未払い残業代請求に繋がってきます。請求額も大きくなることもあり、控除できるバッファとしてのリスクヘッジを図ります。

業務対応地区

【中国地方】-山口県、広島県、岡山県、島根県、鳥取県

【九州地方】-福岡県、大分県、熊本県、長崎県、佐賀県、鹿児島県、宮崎県、沖縄県

【四国地方】-愛媛県、香川県、高知県、徳島県

※ただし、下記の業務は全国対応が可能です。

【労働トラブル対応・解決業務】

  • 労働基準監督署の対応
  • 合同労組・ユニオン・労働組合の対応
  • 未払い残業代請求対策対応

【トラック運送業の賃金制度】

  • 2024年問題の対応・対策
  • 労働時間管理構築
  • 未払い残業代対策
  • 賃金制度構築(歩合給、固定残業)
  • 働き方改革の実務対応

【就業規則の作成・変更・見直し】

  • 固定・定額残業制度の導入
  • 退職金制度の設計

【労務監査(M&A合併を含む)】

  • 労働条件審査、セミナー講師
  • M&A合併、事業譲渡

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