労働問題のことなら、労働基準監督署の是正勧告の対応、合同労組・ユニオンの対応などを数多く手掛ける山口県下関市の「赤井労務マネジメント事務所」にお任せを!
最適賃金とは、賃金本来の「労働の対価」という性格から離れて、在職老齢年金と高年齢雇用継続給付をフル活用し、一定の範囲で、給与手取と公的給付の合計額(総手取額)が最大になる賃金をいいます。
60歳到達時賃金の一定の範囲では、給料を高くした方が、かえって「総手取額」が低くなるという『逆転現象』が生じる。この現象を理解しないと効果的な最適賃金設計は行えません。
2013年度以降、生年月日に応じて60歳から一定期間、年金が支給されません。その一定期間後においては年金が支給されるという、それぞれ2つのステージで賃金設計を行うことが重要となってきます。つまり、無年金期間から年金支給期間に切り替わることを想定して賃金設計を行うことになります。
最適賃金設計を行うには、厚生年金法、雇用保険法、高年齢者雇用安定法、労働基準法を始めとする各種労働法の理解が必要となります。また緻密なシミュレーションはもとより、対象労働者への説明、同意に至るプロセスの形成等、机上の知識だけでは決して思うような効果は得られないのがこの最適賃金設計です。
2013年4月以降は、周辺知識の理解がさらに必要になるでしょう。何故なら、一定期間の年金不支給期間が生じるからです。
この関連知識を有するのが社会保険労務士になりますが、何より重要なのは豊富な経験・実績数です。弊所では十数年来、数十社以上の企業において、200人以上の最適賃金設計を行ってきた実績を有しています。
2013(平成25)年度に60歳になる男性から60歳時には年金が支給されない
そうなんです。今までは60歳になったら年金が受給可能だったのですが、法改正後(平成25年4月)からは生年月日に応じて一定期間全く年金が支給されません。
そのスケジュールは以下のとおりです。
社員の生年月日 | 支給開始年齢 | 無年金期間 |
---|---|---|
S28年4月2日~S30年4月1日生 | 61歳 | 60歳~61歳 |
S30年4月2日~S32年4月1日生 | 62歳 | 60歳~62歳 |
S32年4月2日~S34年4月1日生 | 63歳 | 60歳~63歳 |
S34年4月2日~S36年4月1日生 | 64歳 | 60歳~64歳 |
S36年4月2日~ | 65歳 | 60歳~65歳 |
2013(平成25)年度は、昭和28年4月2日以降生まれの者が60歳になる年度です。
60歳時点での年金支給はありません。61歳からの支給になります。
2001年4月から厚生年金の定額部分(1階部分)の支給開始年齢が65歳まで段階的に引き上げられました。そして2013年4月からは報酬比例部分(2階部分)についても支給開始年齢の引き上げが始まります。
2013年4月以降、60歳の定年で退職する人には、給料も年金受給もない収入の空白期間(無収入・無年金)が生じます。
年金不支給期間をどうするかという問題になります。
従来であれば、60歳以降の最適賃金設計時には60歳から受給できた厚生年金も含めて、企業の支払う人件費を抑えることが可能でした。法改正後は一定期間年金が支給されないので、最適賃金設計を見直す必要があります。
法改正前 | 【給料】+【厚生年金】+【雇用給付金】 |
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↓↓(年金は一定期間ゼロ)
法改正後 | 【給料】+【年金なし】+【雇用給付金】 |
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2013年4月以降に60歳を迎えて、再雇用制度で継続雇用を実施する場合の給料の決定方法を2段階で考える必要があります。
当事務所では、在職老齢年金と高年齢雇用継続給付をフル活用した賃金設定を行うだけではなく、賃金設計の内容を労働者の方に説明し、その内容を理解してもらうことを基本方針としています。複雑な制度ですので、十分説明することが重要と考えているからです。
上記4が最重要ポイントとなります。面倒な作業ですが、この部分をしっかりシミュレーションすることで労使共々最大限のメリットを享受することが可能になります。
上記の状況を考えると、2013年度以降の最適賃金設計は以下の考え方が基本となるでしょう。
2013年問題のポイントは、年金不支給期間の賃金をどうするか?
59歳時 | 年金支給時 | 無年金期間 | |
---|---|---|---|
給与 | 400,000円 | 240,000円 | ●●●,●●●円 |
所得税 | 8,440円 | 3,150円 | 控除額は減少 |
社会保険料 | 56,900円 | 36,083円 | |
雇用保険料 | 2,050円 | 1,250円 | |
控除計 | 67,390円 | 40,483円 | |
給与手取額 | 332,610円 | 199,517円 | ■■■,■■■円 |
通勤手当 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 |
年金支給額 | 0円 | 17,582円 | 0円 |
雇用給付金 | 0円 | 37,500円 | 賃金設定による |
公的給付計 | 0円 | 55,082円 | 賃金設定による |
総手取額 | 332,610円 | 254,599円 | ▲▲▲,▲▲▲円 |
上記シミュレーションの前提条件として
上記の事例ですと、給料40万円を24万へと《16万円の引き下げ》行っていますが、総手取額(給与+公的給付)ベースでは《8万円弱の低下》しかしていません。
何故こんな現象がこるのでしょうか?
まず、賃金額が下がると、<社会保険料>と<所得税>といった控除額が下がるのは理解できるかと思います。次の<在職老齢年金>ですが、これは60歳以降に働きながら年金を受給できるという制度で、給料が多くなるに従いカットされていきます。(上記の例では、40万円の賃金を貰っている場合、給料が高すぎるということで全額カットされてしまっています。)
※ここが勘違いされる方が最も多い部分なのですが、この<在職老齢年金>は、「年金の繰上げ受給」とは全く別もので、この年金をいくら受給しようと、将来の年金には全く影響ありません。つまり受給しなければ損な年金ともいえるものです。
その次の<雇用給付金>は、60歳以降に賃金が下がった従業員に対してその一部を国が補填してくれるという雇用保険による制度です。上記の例では、60歳到達時の賃金が40万円ですので、それ以降の賃金が40万円のままである左のケースでは当然支給されませんが、24万円に下がった上記のケースでは、月額で37,500円も支給されています。
※上記の<在職老齢年金>と同様、この給付を受給したからといって、その後の雇用保険による給付には1円も影響ありません。これも、上記同様、受給しなければ損な給付ともいえます。
以上の仕組みにより、「賃金」と「在職老齢年金」と「高年齢雇用継続給付」の三者の合計手取り額が、賃金が下がった場合でも手取額がそれほど低下しないことになるのです。
(1) 年金が受給できるまでの期間 | 『給与』+『無年金』+『雇用給付金』 | |||
---|---|---|---|---|
(2) 年金が受給できる期間 | 『給与』+『年金』+『雇用給付金』 |
従業員と会社双方にとって大きなメリットを生む可能性がある以上、60歳以上65歳未満の従業員を雇用している会社であれば、一度は活用を検討してみるべき制度であるといえるでしょう。
従業員のためを思い、会社が無理をして高額の賃金を払い続けた結果、かえって従業員の手取合計が少なくなってしまっているのは、あまりに悲しいことです。
これらの制度を利用すれば、下がった賃金額ほどは従業員の手取額が下がらないのは間違いないので(政府からの補填分があるため)、人員整理を検討しているようなケースにおいては積極的に利用を検討するべきでしょう。
※弊事務所では、御社において、高齢者の最適賃金設計を利用できるかどうかの診断を行なっております。賃金額と手取額合計をシミュレーションすることにより、「従業員の手取額が最も多くなる賃金額」や「従業員の手取額が今よりも下がらない範囲で最も低い賃金額」といったデータをピックアップすることが可能です。
高齢者の最適賃金設計においては、様々な公的給付、併給調整その他留意すべき事項が多々あります。ここではスペースの関係でキーワードを中心にピックアップします。
さらに導入・運用面においては、デリケートな対応が必要になってきます。
最も重要な労働条件である「賃金」に変更を加える以上、従業員本人の同意は絶対に必要です。その際、対象従業員へきちんと各制度の説明をすることはもちろんのこと、各従業員のプライドにも配慮する必要があります(長い間会社を支えてきた自負のあるこの年代の方には、手取額に変化が無いことを頭では理解できても、賃金額が下がるということに抵抗があるという方もいます)。
手取額合計が増えるような賃金設定であっても、「在職老齢年金」と「高年齢雇用継続給付」については、対象月から実際の支給(指定金融機関への振込)まで最大2ヶ月強のタイムラグが発生します。さらに、賃金低下(→平均標準報酬月額の低下)による将来的な年金額の低下、万が一従業員が大きなケガをした場合に支給される労災保険・健康保険からの給付の低下といった潜在的な不利益についてまで考慮する必要があります。
高年齢雇用継続給付の給付は、残業代込みの賃金額を基準に支給されるため、毎月の賃金額に変動がある場合、賃金設計シミュレーション通りにならない場合があります。
※それを考慮して、残業分をボーナスに上乗せして支給するよう安易に指導している機関もあるようですが、これは労働基準法の「賃金の毎月払いの原則」に違犯していますので、後で労働基準監督署から残業代の支払命令があった際には、高年齢雇用継続給付にも影響が出て、かなりややこしいことになります。
今後、社会保険各法の法改正により、各給付について変更が行なわれる可能性があるため、制度を導入した後も油断はできません。最近でも、凍結されていた年金額の物価スライドが解除され、高年齢雇用継続給付の支給率が平成15年5月より変更されています(施行日に既に受給資格を得ている従業員については65歳まで従前の率が適用される経過措置アリ)。さらに、平成16年4月からは、在職老齢年金の仕組が変更されています。
※この制度は、「最適賃金額の算出」よりも「導入」が非常に難しいのが最大の特徴です。上記でざっと挙げただけでも分かるように、この制度には「落とし穴」が複数存在するため、労働基準法・労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金保険の各法に精通していることがスムーズな導入のポイントになります。
60歳~年金支給開始年齢までの間は年金不支給期間の賃金設計を行う
【中国地方】-山口県、広島県、岡山県、島根県、鳥取県
【九州地方】-福岡県、大分県、熊本県、長崎県、佐賀県、鹿児島県、宮崎県、沖縄県
【四国地方】-愛媛県、香川県、高知県、徳島県
※ただし、下記の業務は全国対応が可能です。
【労働トラブル対応・解決業務】
【トラック運送業の賃金制度】
【就業規則の作成・変更・見直し】
【労務監査(M&A合併を含む)】