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歩合給に関するQ&A

委託型保険募集人である保険外交員が受け取る歩合給ですが、これがなかなか曲者で、一筋縄ではないのです。委託型募集人から雇用契約型募集人へ移行転換する場合、労務、社会保険、税務の3つの側面で留意する必要があります。

この取り扱いを間違えると、保険代理店、保険募集人双方に思わぬ悪影響が出てきます。更には法令違反を問われることにもなりかねません。

歩合給Q&Aの目次
  • 完全歩合給(100%)フルコミッションは、違法と聞いたのですが?
  • 歩合給制でも割増賃金の支払いは必要ですか?
  • 歩合給に残業代を込みとすることは可能ですか?
  • 歩合給も社会保険料を決める月額報酬に含める必要はありますか?
  • 歩合給を税法上、事業所得として、処理することは可能ですか?

完全歩合給、所謂、フルコミッションは、違法と聞いたのですが?

保障給を設定すれば、完全歩合給制度(フルコミッション)も適法である

保障給とは
  1. 保障給とは、労働時間に応じた、一定の保障額のことをいいます。
    ※労働基準法第27条
     
  2. 保障給の金額は、以下の金額を上回る必要があります。
    • 最低賃金額
    • 平均賃金の60%

解説

委託型募集人のケースであれば、その月の歩合給が0円だったり、100万円だったりの完全歩合給制度(フルコミッション)でも問題はなかったでしょうが、雇用契約型募集人に移行転換すれば、歩合給は、労働基準法の規制を受けることになります。

給与制度構築でも歩合給の取り扱いが重要なポイントになってきます。この保障給の設定次第で適法性が変わってきます。

保障給の設定で大事なのは、金額設定になります。労働基準法第27条は、労働時間に応じて補償しなさいと規定しています。

不必要な金額設定は、無駄な人件費を支払うことになります。これを避けるためにも、委託型から雇用型に切り替わるときの賃金シミュレーションが重要になります。

保障給は、賃金給与規程において、その取り扱いを規定することが労働基準法で求められています。

歩合給制でも割増賃金の支払いは必要ですか?

法定労働時間を超えれば必要である

割増賃金の計算方法

歩合給金額÷総労働時間×0.25×残業時間
※総労働時間=1ヶ月の所定労働時間+時間外労働時間

解説

雇用契約型募集人の割増賃金は、固定給にかかる割増賃金と、歩合給にかかる割増賃金の双方で管理する必要があります。トラック運送業と同様の賃金管理が求められることになります。

歩合給に残業代を込みとすることは可能ですか?

可能であるが、求められる条件をクリアする必要がある

割増賃金の計算方法
  1. 固定残業代の金額が法所定の金額と同額以上である
  2. 固定残業代部分とそれ以外の賃金が区分されている
  3. 固定残業代にかかる「時間数」、「金額」が明確である
  4. 見込み時間を超過した場合、差額精算を行っている
  5. 不利益変更になる場合は、個別同意を取っている

解説

固定残業制度は、最近の労働裁判の判決の動向(判例、裁判例)では、会社側敗訴もしくは従業員寄りの和解が相次いで出されています。

定額残業制度が全面否定されている判決内容ではないですが、制度の運用に関しては、細心の注意が必要となります。リスクを低減する定額残業制度のヒントは、全て込み込みにするのではなく、変動費に応じて一定程度の残業代は、別途支払うことです。

有効な固定残業制度を担保するためには、

  • 就業規則
  • 雇用契約書
  • 給与明細
  • 全て込み込みにしない

で、しっかり規定化、明記するとともに、運用を確実に行うことが重要になります。

歩合給も社会保険料を決める月額報酬に含める必要はありますか?

歩合給を含めて社会保険料が算定される

社会保険料は標準報酬等級により細かく分かれています。所得税、雇用保険料と違い、毎月の給料の多寡で保険料が即時変わる制度設計になっていません。「完全歩合給」あるいは「固定給+歩合給」の給与制度であっても、社会保険料の算定に当たっては、歩合給を含めて算出することになります。

歩合給の運用で社会保険上留意すること

社会保険料の決定方法のひとつとして、毎年4月、5月、6月に支払う3ヶ月の給与の平均額が、9月から向こう1年間の保険料に反映されるルールがあります。

ここで注意したいのが、この3ヶ月に歩合給が多く、3ヶ月の平均値が高額になると、向こう1年間の保険料も高止まり(7月以降歩合給水準が低下した場合)することになります。

こうなると、月例給与と社会保険料のバランスが崩れ、従業員にとっても、保険代理店にとっても悩ましい問題になってきます。

解説

社会保険料の決定システムは、複雑で合理的だとは思えない代物です。しかし、決まり事がある以上、上記の問題点に、合法的に対応できる策を考える必要があります。脱法ハーブではありませんが、脱法ではなく、あくまでも合法的対応策を考える必要があります。

ヒントは、歩合給決定プロセスにおいて、年収ベースにどう割り振るかで、解決の糸口になり、更には、戻入金、手数料不足の対応策にもなります。

ここを間違えると(恣意的操作)、労働基準法の「賃金全額払いの原則」違反、あるいは、健康保険法、厚生年金法違反になる可能性があります。

歩合給を税法上、事業所得として、処理することは可能ですか?

所得税法基本通達により、事業所得として処理することも可能である

労働基準法においては、給与所得として取り扱われるが、税法上は事業所得として取り扱うことも可能とされている(所得税法基本通達204-22)。

所得税法基本通達204-22の概要

外交員又は集金人がその地位に基づいて保険会社等から支払を受ける報酬又は料金ついては、次のように取り扱う。

その報酬又は料金が、固定給(一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付けされる資格に応じてその額が定まるものを除く。以下この項において同じ。)とそれ以外の部分とに明らかに区分されているとき。

固定給(定給を基準として支給される臨時の給与を含む。)は給与等とし、それ以外の部分は事業所得とする。

解説

ここで留意したいのが、取り扱うことも可能とされているとの、表記である。

これは、何を意味しているかと言うと、募集人の置かれている状況次第で、給与所得にも事業所得にもなり得るということである

事業所得の取り扱いとなれば、消費税については仕入税額控除が可能となりますが、給与所得は仕入税額控除することはできませんので、その取り扱いについては十分注意が必要です。

ここで、参考となる金融庁のパブリックコメントを紹介します。

「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正に対するパブリックコメントの結果

下記のような改善は、今回の監督指針改正に沿ったものと
考えてよろしいでしょうか?

  1. 各募集人と雇用契約を結び、一定の固定給を支払い、社会保険に加入します。そして、募集人の教育、指導、管理、研修等を行います。
     
  2. 1の固定給の他、商品等の販売高に応じて歩合報酬を支払います。なお、歩合報酬に伴う経費は各募集人が負担することとします。
     
  3. 各募集人は、生命保険会社の外務員と同様に、1の部分は給与所得として所得税の確定申告をし、2の部分は事業所得として確定申告します。

上記に対する、金融庁の回答

貴見のとおりです。
但し、保険代理店の使用人は、本規定に則り、使用人要件及び労働関係法規を遵守している者である必要があります。

解説

要するに、給与所得になるのか、事業所得になるのかは、委託型から雇用型に移行転換する場合において、事業経費をどう分担するかという、募集人の賃金設計に関わる根幹部分でもある。

そのためにも、賃金シミュレーションはしっかり行って、それに関する募集人に対する説明も必要になるでしょう。

よって、保険募集人に支払う人件費を外交員報酬(事業所得)として、消費税の仕入税額控除する場合には十分注意する必要があります。

業務対応地区

【中国地方】-山口県、広島県、岡山県、島根県、鳥取県

【九州地方】-福岡県、大分県、熊本県、長崎県、佐賀県、鹿児島県、宮崎県、沖縄県

【四国地方】-愛媛県、香川県、高知県、徳島県

※ただし、下記の業務は全国対応が可能です。

【労働トラブル対応・解決業務】

  • 労働基準監督署の対応
  • 合同労組・ユニオン・労働組合の対応
  • 未払い残業代請求対策対応

【トラック運送業の賃金制度】

  • 2024年問題の対応・対策
  • 労働時間管理構築
  • 未払い残業代対策
  • 賃金制度構築(歩合給、固定残業)
  • 働き方改革の実務対応

【就業規則の作成・変更・見直し】

  • 固定・定額残業制度の導入
  • 退職金制度の設計

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  • 労働条件審査、セミナー講師
  • M&A合併、事業譲渡

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