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委託型保険募集人である保険外交員が受け取る歩合給ですが、これがなかなか曲者で、一筋縄ではないのです。委託型募集人から雇用契約型募集人へ移行転換する場合、労務、社会保険、税務の3つの側面で留意する必要があります。
この取り扱いを間違えると、保険代理店、保険募集人双方に思わぬ悪影響が出てきます。更には法令違反を問われることにもなりかねません。
委託型募集人のケースであれば、その月の歩合給が0円だったり、100万円だったりの完全歩合給制度(フルコミッション)でも問題はなかったでしょうが、雇用契約型募集人に移行転換すれば、歩合給は、労働基準法の規制を受けることになります。
給与制度構築でも歩合給の取り扱いが重要なポイントになってきます。この保障給の設定次第で適法性が変わってきます。
保障給の設定で大事なのは、金額設定になります。労働基準法第27条は、労働時間に応じて補償しなさいと規定しています。
不必要な金額設定は、無駄な人件費を支払うことになります。これを避けるためにも、委託型から雇用型に切り替わるときの賃金シミュレーションが重要になります。
保障給は、賃金給与規程において、その取り扱いを規定することが労働基準法で求められています。
歩合給金額÷総労働時間×0.25×残業時間
※総労働時間=1ヶ月の所定労働時間+時間外労働時間
雇用契約型募集人の割増賃金は、固定給にかかる割増賃金と、歩合給にかかる割増賃金の双方で管理する必要があります。トラック運送業と同様の賃金管理が求められることになります。
固定残業制度は、最近の労働裁判の判決の動向(判例、裁判例)では、会社側敗訴もしくは従業員寄りの和解が相次いで出されています。
定額残業制度が全面否定されている判決内容ではないですが、制度の運用に関しては、細心の注意が必要となります。リスクを低減する定額残業制度のヒントは、全て込み込みにするのではなく、変動費に応じて一定程度の残業代は、別途支払うことです。
有効な固定残業制度を担保するためには、
で、しっかり規定化、明記するとともに、運用を確実に行うことが重要になります。
社会保険料は標準報酬等級により細かく分かれています。所得税、雇用保険料と違い、毎月の給料の多寡で保険料が即時変わる制度設計になっていません。「完全歩合給」あるいは「固定給+歩合給」の給与制度であっても、社会保険料の算定に当たっては、歩合給を含めて算出することになります。
社会保険料の決定方法のひとつとして、毎年4月、5月、6月に支払う3ヶ月の給与の平均額が、9月から向こう1年間の保険料に反映されるルールがあります。
ここで注意したいのが、この3ヶ月に歩合給が多く、3ヶ月の平均値が高額になると、向こう1年間の保険料も高止まり(7月以降歩合給水準が低下した場合)することになります。
こうなると、月例給与と社会保険料のバランスが崩れ、従業員にとっても、保険代理店にとっても悩ましい問題になってきます。
社会保険料の決定システムは、複雑で合理的だとは思えない代物です。しかし、決まり事がある以上、上記の問題点に、合法的に対応できる策を考える必要があります。脱法ハーブではありませんが、脱法ではなく、あくまでも合法的対応策を考える必要があります。
ヒントは、歩合給決定プロセスにおいて、年収ベースにどう割り振るかで、解決の糸口になり、更には、戻入金、手数料不足の対応策にもなります。
ここを間違えると(恣意的操作)、労働基準法の「賃金全額払いの原則」違反、あるいは、健康保険法、厚生年金法違反になる可能性があります。
労働基準法においては、給与所得として取り扱われるが、税法上は事業所得として取り扱うことも可能とされている(所得税法基本通達204-22)。
外交員又は集金人がその地位に基づいて保険会社等から支払を受ける報酬又は料金ついては、次のように取り扱う。
その報酬又は料金が、固定給(一定期間の募集成績等によって自動的にその額が定まるもの及び一定期間の募集成績等によって自動的に格付けされる資格に応じてその額が定まるものを除く。以下この項において同じ。)とそれ以外の部分とに明らかに区分されているとき。
固定給(定給を基準として支給される臨時の給与を含む。)は給与等とし、それ以外の部分は事業所得とする。
ここで留意したいのが、取り扱うことも可能とされているとの、表記である。
これは、何を意味しているかと言うと、募集人の置かれている状況次第で、給与所得にも事業所得にもなり得るということである。
事業所得の取り扱いとなれば、消費税については仕入税額控除が可能となりますが、給与所得は仕入税額控除することはできませんので、その取り扱いについては十分注意が必要です。
ここで、参考となる金融庁のパブリックコメントを紹介します。
貴見のとおりです。
但し、保険代理店の使用人は、本規定に則り、使用人要件及び労働関係法規を遵守している者である必要があります。
要するに、給与所得になるのか、事業所得になるのかは、委託型から雇用型に移行転換する場合において、事業経費をどう分担するかという、募集人の賃金設計に関わる根幹部分でもある。
そのためにも、賃金シミュレーションはしっかり行って、それに関する募集人に対する説明も必要になるでしょう。
よって、保険募集人に支払う人件費を外交員報酬(事業所得)として、消費税の仕入税額控除する場合には十分注意する必要があります。
【中国地方】-山口県、広島県、岡山県、島根県、鳥取県
【九州地方】-福岡県、大分県、熊本県、長崎県、佐賀県、鹿児島県、宮崎県、沖縄県
【四国地方】-愛媛県、香川県、高知県、徳島県
※ただし、下記の業務は全国対応が可能です。
【労働トラブル対応・解決業務】
【トラック運送業の賃金制度】
【就業規則の作成・変更・見直し】
【労務監査(M&A合併を含む)】